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『エンジニアリングマネージャーのしごと』を読んだ

ITエンジニア本大賞2023のベスト10にも選ばれた『エンジニアリングマネージャーのしごと』を読んだ感想です。

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ITエンジニア本大賞2023の結果を見て、全く知らなかった書籍もあれば、自分が観測しているソフトウェアエンジニア界隈で話題になった書籍もあり、ITエンジニアでも全く知らない界隈があるんだなぁとなかなか興味深い結果だと思いました。

以下、『エンジニアリングマネージャーのしごと』の感想です。

本全体の内容としては、ピープルマネジメントがメインの内容です。その中でもコミュニケーションや委譲、教育、評価面談、採用といったテーマが扱われています。
このようなテーマをマネージャーとしてどのように具体的に実践するかが書かれています。いずれかのテーマに関心がある方には役立つものになっていると思います。

特に自分が参考になったのは教育観点での発達の最近接領域という考え方です。これは個人の成長を促すためにどのようなレベルのタスクを与えていくかの考え方です。
学習者が支援ありでできるタスクを与えていくのが発達の最近接領域ということになります。
完成するために支援が必要なタスクをタスクの完成を支援する豊富な支援者とともに取り組むことで、より高い難易度のタスクに取り組めるようになり、継続的にスキルを向上させていくことができるという考えです。
この考え方はよい発見でした。どのように人を教育していくかということの根本的な考え方を知ることができたと思います。

また、組織において学習の機会を作るという観点で、問題を学習の機会に変えるというところが参考になりました。具体的にはマネジメントバグという手法です。
これは部門や会社全体などの組織にまつわる問題をメンバーが自由に投稿し、組織に関わる全員がその問題を確認し、解決のためのアクションを促すといった手法です。
このようにオープンに問題解決ができる仕組みを構築することで、組織力の強化につながりそうだと感じました。

ソフトウェア開発において問題になりがちなドキュメントをどのように扱うかの問題に関しても言及されています。コードがなぜこのようになっているかといったことは時が経つと忘れがちです。そんな時にアーキテクチャー決定記録(ADR:Architecture Decision Record)が役立ちます。
そのようなコードを書く判断に至った背景をドキュメントすることによってアーキテクチャの品質を保つことができるはずです。
自分の現在の環境が組織の新陳代謝が激しい環境であるため、こういった決定の背景を残していくことは持続的なソフトウェア開発にとって重要だと感じました。

このように『エンジニアリングマネージャーのしごと』にはソフトウェアエンジニア組織のマネージメントについて役立つノウハウが具体的に書かれています。
このようなノウハウを一つでも現場に取り入れてみるとマネージメントや組織力の向上につながるのではないかと思います。